開発裏話

ミクロハンターレンズの開発者であるリー・キュイ氏にインタビューをして「開発の裏話」を聞きました。

上海を拠点にした「Shanghai Qingying E&T LLC」は顕微鏡写真を楽しんだり、ミクロの世界を探索したりするためのスマホ用顕微鏡ツールを開発・提供することを目的に活動しており、商品開発には顕微鏡愛好家や専門家も協力しています。

2012年に最初の特許を登録して以来、スマホの顕微鏡ツールの開発には長い道のりを歩んできました。製品ユーザーの提案や感想に耳を傾け、ミクロハンターレンズ のアイデアを形作り、磨き上げました。 度重なる試作品の製作、試験、改良を繰り返し、コストパフォーマンスの非常に高い顕微鏡レンズを製造しています。

ミクロハンターレンズの誕生は、リー・キュイというひとりの人の情熱から始まりました。子ども時代、学校の理科の授業をきっかけにミクロの世界に魅了されたリー・キュイ。しかし、当時リーの家族には経済的な余裕がなく、高額な顕微鏡を買ってもらう事できなかったという経験がありました。

ミクロの世界への情熱は大学卒業後も消えることはなく、電子産業に就職。そこで最先端の光学技術を学び、様々な研究に携わりました。その後、「誰もが気軽に使える高性能な顕微鏡をつくろう」という信念をもと、優れた電子技術や光学技術を持つ仲間たちを結集し、2012年に「Shanghai Qingying E&T LLC」を設立しました。

(上画像:ミクロハンターレンズでオシロイバナを観察している様子)

Q. 子供の頃にミクロの世界に魅了され、それが今の製品づくりにつながっていると聞きました。ミクロの世界のどんなところに魅力を感じているのでしょうか?

(リー・キュイ氏)中学生の頃、生物実習の授業で、生きているカエルの手のひらの血液(赤血球)の流れを初めて観察したことがあります。肉眼では見えないものが「見えた」ときの衝撃は大きかったです。

ミクロの世界のすごいところは、肉眼では見えないのに、私たちの身の回りに「存在している」ということ。
バクテリア、ウイルス、菌類などの微生物は、信じられないほど小さいですが、私たちの世界にとって不可欠な存在です。
有機物を分解したり、酸素を生産したり、消化を助けたり・・・。

(上写真は、microHunter X100で撮影した人の血液標本)

また、顕微鏡で世界を見ると、細胞の複雑な内部構造や蝶の羽の複雑な模様など、生物を構成する複雑な構造も見ることができます。
それにより、私たちは自然界やその仕組みをより深く理解することができるんです。

(上画像:microHunter X100で撮影した蜂の脚)

ミクロの世界は、医学、生物学、材料科学などの分野で応用されています。例えば、病気の診断、物質の性質の研究、さらには新しい技術の開発にも顕微鏡が使われています。

このようにミクロの世界は、私たちを取り巻く世界の複雑さと美しさを全く新しいレベルで見せてくれます。そして私たち人間社会に計り知れないほどの恩恵を与えてくれています。
それがミクロの世界の魅力的だと思います。

(上画像:生地繊維の観察)

Q. 「指先サイズの顕微鏡レンズ」の開発を始めたきっかけは何ですか?

(リー・キュイ氏)私は、これまでの研究や仕事の経験で、顕微鏡をはじめとする多くの機器を使用してきました。顕微鏡は大型なものが多く、一番小さいものでも卓上型です。しかし、フィールド調査のように「現場」で行う作業では、携帯できる顕微鏡道具が必要でした。2010年頃にはカメラ付き携帯電話(スマートフォン)はすでに普及し始めていました。そこで、所有していたスマホに顕微鏡の接眼レンズを付けて試作してみたところ、予想以上の出来栄えで、これが最初の試作でした。これは趣味で作った道具でしたが、世の中にもかなりニーズのあるものだと確信し、市場に投入できる製品の開発を始めました。

(上画像:クラウドファンディングを活用して市場投入された初期のミクロハンターレンズ)

指先サイズの顕微鏡レンズを開発することで、以下のようなさまざまな利点や用途が期待できました。

・ポータブルで身近な医療診断
指先サイズの顕微鏡レンズがあれば、医師や医療従事者は、高価な機器や専門的な環境を必要とせずに、患者の皮膚の病変やその他の異常を迅速かつ容易に検査できるようになる可能性を秘めます。

・環境モニタリング
研究者や環境の専門家は、指先サイズの顕微鏡レンズを使って、土壌や水のサンプル中の小さな生物や物質を調査し、生態系の状態や人間の活動による影響に関する調査に役立ちます。

・教育や科学研究
指先サイズの顕微鏡は、学校や研究所でも使用できます。学生や科学者が微生物やその他のミクロの構造を研究するのにお手軽で使いやすいからです。

・品質管理&製造
製造業では、指先サイズの顕微鏡レンズを使って小さな部品や製品の欠陥を検査することで、高品質な規格を確保し、無駄を省くことができます。

このように、医療診断、科学研究、品質管理等の方法を大きく変える可能性を「指先サイズの顕微鏡レンズ」に感じ、研究開発を始めました。

(上画像:ミドリゾウリムシ)

Q. 開発にあたって、どのような難しさがあったのでしょうか?

(リー・キュイ氏)ミクロハンターレンズの開発には、以下のような課題がありました。まず、画質と解像度です。主な課題の一つは、正確な診断や分析に十分な解像度で高品質の画像を撮影できるレンズを開発することです。レンズのサイズが小さいため、大型で高価な顕微鏡と同レベルの画質を実現するのは難しいのです。そのために、さまざまなレンズの試作品を作ってはテストを繰り返し、長い道のりを歩んできました。

また、モバイル機器(スマホやタブレット)との互換性にも苦心しました。レンズの最初のバージョンでは、「私のスマホに対応していますか?」という質問をよく受けました。現在、最新バージョンではほぼすべてのスマホに対応しているため、そのような質問をされることもほとんどありませんが、このデザイン設計にも難しさを感じました。

Q. 製品のこだわりは何ですか?

(リー・キュイ氏)私が大変気に入っているミクロハンターレンズの特徴をいくつか紹介します。

・高解像度イメージング
ミクロハンターレンズはスマートフォンのカメラと連携し、正確な診断や科学的分析を可能にする十分な解像度で高品質な画像を撮影することができます。

・コンパクトで持ち運びやすいデザイン
超小型サイズのレンズ。パッケージも超薄型・軽量で持ち運びやすく、現場や遠隔地での使用にも便利です。

・モバイル機器との親和性
今日多くの人がスマホやタブレットを携帯していますが、ミクロハンターレンズは、これらのデバイスのほぼ全てに対応するように設計されています。画像やデータを簡単に共有できるのが便利です。

・手頃な価格で入手可能
ミクロハンターレンズは、コストパフォーマンスが高いです。だから、より多くの人に使ってもらう事ができます。私が中学生の頃に同じようなものがあったらよかったのに、と思います。

Q. 製品のユーザーから多くのフィードバックが寄せられていると思います。特に印象に残っているエピソードや、嬉しかったエピソードなどはありますか?

(リー・キュイ氏)製品ユーザーから多くのフィードバックや提案をいただきました。これらの貴重な情報は、製品開発の大きな支えとなっています。2022年1月、ミクロハンターレンズの1つがTimes Magzineの「2022年の最高の発明品」のひとつに選ばれたことを、ユーザーの一人が大喜びで伝えてくれました。受賞した事ももちろん嬉しいですが、何よりも製品ユーザーが興奮しながらそのニュースを教えてくれたことが、とても嬉しかったです。

Q. 今後の展開について教えてください。

今後の計画についてはあまり話すことがありませんが、今後も変わらない事は2つです。

(1)市場を拡大し、製品をより多くの人に役立ててもらうこと。

(2)リニューアルを続け、製品開発に力を入れること。

Q. ミクロハンターの製品ユーザー様にお伝えしたいことがあれば、教えて下さい。

この場をお借りして、すべてのお客様、特にご意見やご感想をお寄せいただいたお客様に、心から感謝の気持ちをお伝えしたいと思います。私たちの製品を選んでくださり、また私たちの製品開発を支えてくださってありがとうございます。